音楽が見せてくれるものー出張レッスンピアノ倫子(R.N.)講師

例えば、あるコンサートを見に行って、心が震えるようなこと。
例えば、ある歌を聴いていて、どうしようもなく涙が出てしまったこと。

もしかしたら、こんな経験を一度はしたことがある方もいらっしゃるのではないのでしょうか?

また、例えば、ある思い出の瞬間とリンクしている音楽。
例えば、ある風景とリンクしている音楽。

もしかしたら、その音楽を聴くと思い出がよみがえってくる・・・そんなこともあるかもしれません。

『音楽』
それは私たちに安らぎを与えてくれるもの、感動を与えてくれるもの、
喜びを与えてくれるもの・・・
もちろん感じ方は人それぞれですが私たちの日常にそっと寄り添ってくれていることは
確かではないでしょうか。

それと同時に、私は、音楽には『何か』を見せてくれる、
感じさせてくれる不思議な力があるような気がしてなりません。

   

今回は、私が『音楽に見せてもらったもの』のお話をしたいと思います。

数年前、私はとある講義でとても興味深いお話しを聞きました。

ある演奏会で演奏することになったAさん。
Aさんは、今回の演奏会に向けてどのように演奏していいか分からなくなってとても悩んでいたそうです。

なぜAさんは悩んでいたのか・・
それは、その『ある演奏会』というのが「戦後○年の平和を祈る」という趣旨の演奏会だったから。
Aさんは戦争を知らない世代の方で、その演奏会に向けて戦争のことについて
少し調べたりしたそうなのですが、どのように演奏に気持ちを注げばいいのか。
何を想って弾いてもどことなく白々しく感じてしまう・・・
演奏に対してどこに気持ちを持っていけばいいのか分からなくなってしまったそうなのです。

そこである先生(ピアノの先生ではなかったそう。)に相談したところ、言われたことがたった一言
「演奏会の意味を考えなさい。」という言葉だけだったそうです。

しかし、Aさんは先生からいただいたその言葉から、戦争に対して悲しみ怒りを込めることよりも
「現在、未来の平和を祈る」ことが今回の演奏会で自分が演奏する意味であると考えました。

演奏会当日。

Aさんは自分の演奏に、ありったけの自分の「想いと祈り」を込めたそうです。

そしてそのときとても不思議なことが起こりました。

Aさんは戦争を知りません。
しかし、演奏をしていて、まるで絵巻物のように戦争の映像が頭に流れ込んできたそうなのです。

そのときの感覚はとても不思議だったそう。
見たこともない風景、人々が頭の中に次々に浮かびあがり・・・気付いたら演奏が終わっていた。
そして涙が止まらなかった・・と。

私はこのお話を聞いたとき、興味深い話だとは思いましたが、
正直「まさか、そんな超常現象みたいなことがあるかしら?」程度にしか思いませんでした。
そして、つい1年前まですっかりこの話は私の頭の中から消え去っていたのです。

音痴克服pic

このお話しを思い出したのは、こんなことがあったからです。

私は、その時本番に向けてある曲を練習していました。

その曲は、作曲者がその曲を作曲していた時の背景に、
ある女性との大恋愛が大きく絡んでいた曲です。
私自身、本当に大好きな曲で、ずっと弾きたかった憧れだの曲だったので、
作曲された時代背景や、作曲者のその大恋愛についても詳しく調べ、
少しでも作曲者の心理に近づきたい!という思いでした。

「ここはきっと彼女に対する熱い思いを・・・」
「ここはきっと結ばれないことに対する怒りや憎しみを・・・」

試行錯誤しながら、想像でしか分からない感情を曲に込めて弾いていました。

しかし・・やはり経験したことのない感情を表現する。なんてことは上手くいかないのです。
情熱や憎しみや、怒りを音楽にのせて弾くことは一見弾いているときは、
想いをぶつけて音楽にのめり込めているいるように感じますが、
なんだかどこかぎこちない。腑に落ちない。白々しい。
自分でも、そんな自分の演奏に気づいてはいたものの、
「作曲者の気持ちに近づくためには、私も同じように感じないと!」と
考えていた私はそのままレッスンにもっていきました。

・・・さすが先生です。

私の背伸びした表現も、自分で腑に落ちていないことも一回目の演奏でピシャリと
言い当てられてしまいました。
そして「経験してもいないような恋愛と絡めて演奏するのはやめなさい。」と
言われてしまいました。

そうです、その通りなんです。
自分が経験していないことを、ただ知識として取り入れた作曲者の上辺だけの人生を
さも自分の経験のように語っていた私の演奏はまさしく「中身のない演奏」でした。

演奏の行き場をなくし、困り果てた私に先生がくださった助言は
「あなたが育った自然を表現したら?」ということ。

私の出身は長野県です。
北アルプスや山々に囲まれていて、文字通り「自然に囲まれた」場所で育ちました。
(今、朝の連続ドラマ「おひさま」で長野県安曇野市が舞台になっています♪)

そして私はとりあえず先生の助言通りに、生まれ育った場所を思い描いてみることにしました。

目をつむって山や川、花や鳥の鳴き声を思い出す・・

そして最初の一音・・川から水が流れ落ちるように・・・

そこからは、不思議なことに自分で思い浮かべなくても次々と風景が頭の中に流れ込んできました。
木がざわざわというところ。
朝の冷たい空気。
リンゴの甘い香り。
川の流れが下って下ってどんどん加速する様子。
雪の降った日の空の色。
早朝に鳴くおもしろい鳥の声。

日頃は思い出さないような風景までもがするすると頭の中に思い浮かびました。

なんだろう・・この感覚。
自分の想いや表現がどんどん溢れてくる感覚。

恥ずかしながら、今までピアノと共に生きてきて初めての感覚でした。

弾き終わった私は、初めての感覚に鳥肌が立ち、
思い浮かんできた故郷の懐かしい風景にじわりと目頭が熱くなりました。
ちら、と先生のほうを見るとにっこりとほほ笑んでくださっていました。



このときに私は冒頭のある講義での話をふと思い出したのです。
あの時は、「超常現象」のように考えていたことを身をもって体験したのですから。

そして、Aさんの体験と私の体験で共通している点は、
「自分自身の想い」を演奏に込めた点ではないかと思うのです。

みなさんが、「感動する」音楽とはどのようなものでしょうか?
歌詞が心の中に入り込んでくる歌とはどのようなものでしょうか?

もちろん、その曲がもつ素晴らしさ、歌詞の素晴らしさは言わずもがなですが、
私たちの心にすーっと入り込んでくる音楽には『演奏家の込めた想い』が
大きく影響しているのではないかと私は思うのです。

どんなに素晴らしい曲でも歌詞でも、演奏家がただただ音を弾いているだけ、
歌詞を音に乗せているだけでは誰の心にも響きません。
曲に歌詞に共感し、それを吸収し、自分の血となり肉となり、
さらに自分自身の表現で外に発散することにより、
初めて「音楽」として響かせることができるのだと思います。

しかし、これは言葉では簡単に言えることですが「じゃあ、心に響かせてみろ!」
と言われて簡単にできることではありません。
(私自身も最近になって、ようやく実感できたことです・・・)

日常生活で見たこと、感動したこと、怒ったこと、悲しかったこと、聞いたこと。
そんな風に一つ一つ感じたことや経験したことが、
少しずつ自分の音楽に何色もの色をつけてくれる材料になると私は思っています。

音楽は私たちに広い世界を見せてくれます。
行ったことのない国、場所、時代に思いを馳せることが出来ます。

次は私に何を見せてくれるのだろう?
どんな経験をさせてくれるのだろう?

いつか音楽が見せてくれる『何か』に期待して、私は今日もピアノに向かうのです。



※コラムは、ピアノ指導倫子講師によるものです。

【倫子講師について】
桐朋学園大学付属「子供のための音楽教室」出身。
桐朋学園大学音楽学部音楽学科ピアノ専攻卒業。
第20回日本クラッシックコンクール大学生の部全国大会入選。
つつじヶ丘在住。
出張レッスン、および自由が丘教室では金曜日9時から14時まで
皆様の指導をさせていただくことになりました。
2歳のソルフェージュ、3歳未就学児、そのほかご趣味で音楽にご関心を
お持ちの方、丁寧に指導をさせていただきます。

倫子講師@youkoPC

【管理者から一言
小さなお子様の指導がとても上手な先生です

出張レッスンおよび自由が丘教室(金曜日の午前中2歳・3歳の未就学児)
ピアノの指導をさせていただきます。

テーマ : お気に入り&好きな音楽
ジャンル : 音楽

     
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